「営業で成果を出すためには心理学を勉強した方がいいですよ」なんて言われたことがある人は多いと思いますが、説明が難しかったり意味がわからなかったり…。それで拒否反応をおこして勉強するのを辞めてしまった、なんて人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、なるべくわかりやすく、簡単で実用的に「営業で活用できる心理学」をご紹介していきたいと思います。
さて、まず第一弾は「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」と「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」について。有名なものなので、営業初心者の方でも名前くらいは聞いたことがある、という人も多いのではないでしょうか。
知っていて損のないテクニックですので、最後までご覧いただいてぜひご活用ください^^
こんな人におすすめ!
- 営業経験の浅い人
- なかなか営業で成果が出せない人
- フリーランスや個人事業主
- もっと営業力を高めたい人
フット・イン・ザ・ドア ・テクニック
フット・イン・ザ・ドア ・テクニック とは?
フット・イン・ザ・ドア・テクニックというのは、まず難易度の低い簡単なお願いをします。そしてそれを承諾してもらったら、段々大きなお願いをしていき、最終的に自分の希望する条件にも承諾してもらう、というテクニックです。
フット・イン・ザ・ドア・テクニック
出典:コトバンク
相手の承諾から生まれる慣性を利用した交渉術。段階的要請法ともよばれる。依頼や交渉の際、相手が承諾しやすい要求から始めて、徐々に要求を大きくしていく話法のことで、小さな要求への承諾をステップとしながら、最終的に、こちらの最も望ましい要求を承諾するよう相手を導く。
例えば、街を歩いているときに「この商品の説明を聞いてください」と言われたら、立ち止まって話を聞くと思いますか?きっと断りますよね。私も断ります。
でも「1分で終わる簡単なアンケートにご協力ください」というお願いだった場合はどうでしょうか。「それくらいだったら答えてもいいかな」と思う人もいるのではないですか?
そしてアンケートに答えてくれた人に、「ではこの商品の説明も聞いてください」とお願いした場合。なぜか断りにくくなるんですね。いきなり説明を聞くようにお願いしたときよりも多くの人が商品説明を聞いてくれる、のです。
これは実際に沢山の研究者が実験をしていて、どの研究でも簡単なお願いから難易度を上げていくほうが承諾してもらえる人が多くなる、という結果が出ているんですよ。
フット・イン・ザ・ドア ・テクニック はなぜ効果的なのか
一貫性の原理
なぜ同じ「説明を聞いてください」というお願いなのに、先に簡単なお願いをしてからのほうが承諾してもらえる可能性が高くなるのでしょうか。
その理由は「一貫性の原理」が働くことにあります。わかりやすく言うと、「自分の態度や発言、感情や行動などに一貫性をもたせたい」という心理のことです。一度OKと言ってしまうと、次に「嫌だ」と言い出しにくくなるんですね。
この心理学を使ったテクニックは様々な所で使われいます。例えば以下のような経験はありませんか?
とある洋服屋さんに入り洋服を見ていました。すると店員さんに「試着だけでもお気軽にどうぞ」と声をかけられます。
試着だけならしていこうかな、と試着をしたら店員さんに「凄くお似合いですよ」などと言われて。元々買い物をするつもりはなかったけど、なんとなく買おうかな、という気持ちになってしまった。
すると店員さんは「こちらのジャッケットだとインナーはこちらが素敵ですよ。ご一緒にいかがですか?」と言われ、ついつい買ってしまった。
あるあるですよね(笑)試着だけのつもりだったのに、なんとなく「買わずに帰ります」と言いづらい気持ちになって、そんなに欲しくなかったのに買ってしまった、って経験をしたことのある人は多いのではないでしょうか。
これ、試着をしていない段階で「このジャケットいかがですか?お客様にお似合いですよ!インナーはこれが素敵ですよ」と店員さんに言われたとしても「いいえ今日は結構です」って簡単に断ることができると思うんですよ。
これが一貫性の法則です。試着をするという行動と買わずに帰るという行動に矛盾が生じたため、心の中にちょっとした抵抗感が生まれてしまい、断りにくくなってしまうんです。
他にも「スーパーの試食」「お試し無料利用」「試供品」などもフット・イン・ザ・ドア・テクニックを活用しているよ!
営業におけるフット・イン・ザ・ドア ・テクニック の活用法
営業をする際にも、「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」を活用をしてみましょう。
いきなり「購入してください」「契約してください」という高いハードルのお願いをするのではなく、「まずは資料を送ってもいいですか?」「サンプルを送ってもいいですか?」など簡単なお願いでもいいので、まずは要望にOKしてもらうことが大事です。
そうすると、次の「資料の詳しい説明がしたいので、30分ほどお時間いただいて説明させてください」などという次のお願いにも「はい」と答えてくれる可能性が高くなると思います。
商談でもすぐに売り込もうとするのではなく、「まずは商品の説明を聞いてもらうだけでいいんです」とか「お客様の現状をヒアリングするために来たので、いくつか質問させてください」という風に言ってみるといいでしょう。
資料送付にOKした、現状のヒアリングにもOKした、商品説明にもOKした・・・という風にOK(承諾)が続くと、契約や購入の段階になったときにも「OKしたい」という気持ちが働きます。以前の行動(言動や感情)と今の行動 (言動や感情) が矛盾しないようにしたい、と思ってしまうんですね。
もちろん100%うまくいく!というものではないですが、いきなり大きなお願いをするよりは遥かに契約の確率が高くなっていると思います。
ドア・イン・ザ・フェイス ・テクニック
ドア・イン・ザ・フェイス ・テクニック とは?
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックとは、断られるような大きなお願いをします。そしてそこからお願いの難易度を下げていくことで最終的にこちらの望んだ要求にOKしてもらうための交渉術です。
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
出典:コトバンク
要求水準の落差を利用した交渉術。譲歩的要請法ともよばれる。依頼や交渉の際、最初に難度の高い要求を出して相手に一旦拒否させておき、それから徐々に要求水準を下げていく話法のことで、先立つ要求を目くらましにして、最終的に、こちらの最も望ましい要求を承諾するよう相手を導く。
例えば、価格設定などで、本当は10万で売りたいと思っている場合、最初に10万と言わず「30万でいかがですか?」と断られるのを前提に高い金額を提示します。
そして「無理ですね」などと断られた後に「では10万だったらどうでしょう」…と本来の値段を伝えるんです。すると最初からいきなり10万を提示するよりも契約の確率が高くなる、というものです。
ドア・イン・ザ・フェイス ・テクニック はなぜ効果的なのか
ドア・イン・ザ・フェイスには2つの心理効果があると言われています。
アンカリンク効果
まず1つめは、最初の大きなお願いのほうが基準となるため、後から提示されたお願いに対して「これくらいならOKでもいいか」という心理になる、ということです。
すまんが明日から1ヶ月間、毎日残業をしてくれないか?
と上司に言われたら、どうですか?めっちゃ凹みますよね。1ヶ月も残業嫌だなぁーって。
でもその日の夕方、上司があなたに向かってこう言います。
1ヶ月間残業って言ったけど、2週間だけで良くなったんだ。
どう思いますか? ラッキーって思いません?1ヶ月もあると思っていた残業が半分の2週間になった。なんだか得をした気持ちになりますよね?
これはなにもないところから2週間の残業だと0から残業に増えていますが、最初に1ヶ月の残業という基準ができたため、1ヶ月から2週間に減ったんですね。
これを「アンカリンク効果」と言います。最初に提示された金額や数字、特徴などを基準にして判断してしまうことです。
返報性の原理
もう一つは返報性の原理です。「人に何かをしてもらったら自分もお返しをしたい」と思う心理のことを言います。例えば自分の誕生日にプレゼントをもらったら「相手の誕生日のときにもプレゼントを贈りたいな」ランチをごちそうしてもらったら、「何かお礼がしたいな」などと思いますよね。この心理のことです。
罪悪感というか、「こんなにしてもらったんだから、私もなにかしないと申し訳ないな、というような気持ち」この心理をうまく活用しているのがドア・イン・ザ・フェイス・テクニックです。
つまり「相手が譲歩(大きな要望から小さな要望へ)しているんだから、自分も何かお返ししないといけないな」と思ってもらい、小さい要望の方にはOKしてしまう、というものです。
営業における ドア・イン・ザ・フェイス ・テクニック の活用法
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニックを使うのは、金額や契約の交渉のときに有効だと思います。
- 最初に少し高めの金額で提示し、断られたら値引きをして再度提示する
- 2年縛りなど契約期間の長いプランをおすすめし、断られたら契約期間の短い別のプランを提示する
- テレアポで商談は断られたが「では資料送付してもいいですか?」などと提案する
今までお客様・クライアントに断られた際「そうですか・・」と諦めてしまっていた方!勿体ないです。少し難易度を下げたお願いを再度してみることで「それならいいよ」と言ってもらえる可能性があります!ぜひ活用してくださいね。
相手の罪悪感を利用している手法なので、多様・悪用すると相手の関係が悪くなってしまう可能性もあります。しっかりと信頼関係を築いた上で、一番大事な交渉の際に1度(か2度)程度だけ使うのがおすすめです。
結局どちらを使えばいいの?
さて、フット・イン・ザ・ドア・テクニックとドア・イン・ザ・フェイス・テクニックの2つについてご紹介しましたが、ここで疑問はありませんか?
2つのテクニックは真逆だけど、どっちを使えばいいの~~~!
そうですよね。フット・イン・ザ・ドア・テクニックは 簡単なお願いをして段々難易度を上げるテクニック。そしてドア・イン・ザ・フェイス・テクニックは最初に難易度の高いお願いをして断られた後に難易度を下げるテクニック。
真逆ですよね。2つの使い方としては以下を意識するといいと思います。
最初はフット・イン・ザ・ドア・テクニックを使って段々お願いの難易度を上げていく。そして断られたらドア・イン・ザ・フェイス・テクニックを使って譲歩する!
では「3ヶ月プランを契約してもらう」というのをゴールとした場合の営業例を見てみましょう。
新商品が発売になったのでサンプルを使ってみてもらえませんか?
簡単なお願い
無料ならいいですよ
ありがとうございます。サンプルを使ってみた感想をお聞きしたいのですがアンケートにご協力いただけますか?
フット・イン・ザ・ドア
簡単なアンケートくらいならいいですよ
ありがとうございます。アンケート送付と一緒に弊社の資料も送らせていただけますのでぜひご覧ください
フット・イン・ザ・ドア
わかりました
資料はご覧いただけましたか?この資料にあった2年間継続でご利用いただけるプランが人気なのですがご使用になってみませんか?
難易度の高いお願い
いや2年間解約できないんですよね?それは結構です
そうですか。ではこちらの3ヶ月プランのほうはいかがですか?3ヶ月ご利用いただいて満足できなかった場合は解約できますよ。
ドア・イン・ザ・フェイス
なるほど、じゃあ3ヶ月のほうで試してみようか・・・。
ゴール!!
もちろん実際は上記以外にも色々な会話を行っている中で成立するのですが、フット・イン・ザ・ドア・テクニックとドア・イン・ザ・フェイス・テクニックの使い分けについてはご理解いただけたのではないかな、と思います。
まとめ
いかがでしたか?営業で活用できる心理学①。今回はフット・イン・ザ・ドア・テクニックとドア・イン・ザ・フェイス・テクニックについてご紹介しました。
もっともっと詳しく営業やマーケティング、交渉学について知りたい人、フリーランスの悩みを相談したい人はぜひお気軽にお問い合わせくださいね!